2014年1月27日月曜日

コンサートラッシュ☆彡

まだまだ続く、コンサートラッシュ☆彡

コルカタで毎年催される、4夜連続オールナイトコンサート(1月22~26日)

【THE DOVER LANE MUSIC CONFERENCE】

夜8時から始まって、朝6時くらいに終わる、というのを4回くりかえすのです。
なぜ、朝から夜までにしないのか。なぞなぞなのですが。
たぶん、平日もやっているので、昼間働いて、夜来れるようになっているのかな。
なんて、思います。

何はともあれ、今年も素晴らしい演奏がたくさんありました。
私は、2日目と3日目だけ行きました。

【2日目】

まずは、インドの人間国宝、バンスリー奏者のハリプラサード・チョーラシアさん。
御年75歳。もうあまり大きな音を出すことは出来ませんが、素晴らしい演奏でした。
彼の演奏を聴く度に、歳を重ねて、体力の限界に近づくほどに、出せるようになる音があるのだと感じまています。
タブラは、シュバンカル・ベナルジーさん。
ハリジーに合わせ、とても軽い繊細な音で優しく心強く付いていく姿に、感動しました。



 

次は、女性ボーカリスト、シュルティ・サドリカールさん。

彼女の歌うRaga Kaunshi Kanaraを聴いて、以前、民謡の先生に言われたことを思い出しました。
「どんな歌でも練習すれば上手になるけれど、自分の声に合った歌じゃないと、それ以上は歌えない」シュルティジーの声に、このラーガのムードがとても合っていたように感じました。



そして、軍を抜いて大人気の男性ボーカリスト、ラシッド・カーンさん。
彼の歌声は、滑らかで奥深くて、と思いきや、激しく情熱的で、その豊かさにいつも脱帽です。
さらに、ハルモニウム以外に、サーランギという弦楽器も伴奏に付き、豪華絢爛です。
ハルモニウムは、重鎮ジョーティ・ゴホさんでした。
タブラは、再登場、シュバカルジー。先ほどのハリジーの演奏と打って変わって、叩く叩く!
ラシッドジーの力強さを更に力強く持ち上げていました。伴奏の素晴らしさ、面白さ、ありがたさ、たくさん感じた夜でした。


【3日目】


ドーバーレーンのその前に。
超絶技巧男性ボーカリスト、ウルハス・クシャルカールさんの息子さん、サミーハン・クシャルカールさんの演奏を聴きに、SRA (コルカタの音楽学校Sangeet Research Academy)へ。
行ったのですが、なんと、スケジュール変更!
・・・・・・がっかり。
したのも束の間。
別の生徒さんのバイオリン演奏、Raga Malkaunsがとても良かったのでした。どこまでも羽ばたいて行きそうな勢いのある、それでいて丁寧な演奏でした。
SRAでは、毎週水曜日と金曜日に、生徒さんの演奏会があり、誰でも入場できます。
大御所の演奏と違って、生徒さんの演奏は個人の色や味や癖がまだなくて、私には聴きやすく、とても勉強になります。日々の練磨がいっぱい詰まった演奏はとても素晴らしいです。


さて、またドーバーレーンへ向かいます。


この日のチケットは手に入りにくかったのですが、その訳はこの方、アノーシュカ・シャンカールさん。
シタール奏者としては、世界的に一番名の知られているであろう、ラビ・シャンカールさんの娘さんです。ジャズシンガー、ノラ・ジョーンズさんの異母姉妹でもあります。彼女は普段、エレクトロニカなどポピュラー音楽の方で活躍していて、古典の演奏は少ないと思います。そんな彼女の演奏をひと目見ようと、本当にたくさん観客が集まっていました。
ビビッドなピンクのドレスで現れた美しい彼女は、それだけで観客を魅了していました。


さて、私の中の一番人気、コウシキ・チャクラバティーさんの登場です。
コウシキジーも春めいたピンクのサリーでとても可愛かったです。
Raga Basant Mukhaliと、tumuri(愛の歌)をひとつ、アンコールにbhajan(讃歌)をひとつ。
彼女は、靭やかに伸びのある、軽やかな歌声で、いつもうっとりしてしまいます。
しかも容姿も可愛いので、とても人気があります。

可愛いって大事だな~~って、ふわふわ思いました。





そんなふわふわした明け方。
南インド古典のバイオリンの演奏がありました。
L.スブラマニアムさん。金子ユキさんという、日本人のお弟子さんが居らっしゃいます。
初めて南インド古典を聴いたのですが、音楽の構成が全然違うことに驚きました!
ちなみに、私が勉強しているのは、北インド古典です。
スブラマニアムジーの音色、目を瞑れば、あっという間にアナザーワールドでした。





【なんとまぁ】

南インド古典があまりに面白かったので、ボーカルも聴きたいと願ったら、すぐ叶いました。
池田絢子ちゃんがサクッと見つけてくれたので、早速行ってきました。


サンジャイ・スブラマニアンさんという男性ボーカリスト。
まず、技巧の豊かさに驚きました。インド古典音楽を勉強し始めて、ボーカルというのは、私という楽器なのだと常々感じるのですが、サンジャイジーからは色んな質感の声がたくさん溢れてきて、とにかく凄かったです。

1曲長くても20分位の演奏が、いくつもいくつもありました。休むことなく次々と歌い続けて、3時間。演奏の素晴らしさも然ることながら、その体力にも驚きです。


もう素晴らしい音楽でお腹いっぱいなのですが、起きるとまたお腹は空きます。
というわけで、まだまだ、コルカタのコンサートラッシュはつづきます☆彡

2014年1月21日火曜日

週末のコンサート。



コルカタでの愉しいライフを時々書いてみようと思います。

週末は、連日素晴らしいコンサートばかりでした。


金曜日。


若手人気シタール奏者プルバヤン・チャタルジーさんと、タブラの巨匠オニンド・チャタルジー大先生の息子さん、オヌブロート・チャタルジーさんのコンサート。
オニンドダーとオヌブロートダーから学んでいる池田絢子ちゃんがタンプーラを弾きました。

プルバヤンダーとオヌブロートダーは公私共に仲が良いそうで、流石スッキリかみあって素晴らしかったです。

演奏されたRaga Yamanのティンタールのバンディッシュ(曲)は、「エリ アリ ピアビナ」。
よく聴く歌なので、「私の名前はエリです」と言うと、時々この歌を歌ってくれる人もいます。

プルバヤンダーは、シタール奏者ですが、よく演奏の途中に歌います。
この日も、ティンタールに入ったところでこの歌を歌ってくれたので、とても嬉しかったです。



土曜日。


コルカタで、私にとてもよくしてくれるハルモニウム奏者のお姉さんがいます。
ルパシュリー・バッタチャルヤさんです。
ハルモニウムという楽器は、箱型のオルガンのような楽器で、ボーカルの演奏に伴奏で付きます。なので、彼女はいつも色んなボーカリストのコンサートで演奏しています。そして、いつも私を一緒に連れて行ってくれます。
これまでも数多くのコンサートに同行させてもらい、それだけでも相当ラッキーなのに、更にはヴェンカテーシュ・クマールさん、アシュウィニ・ビデ・デスパンデさんなどのタンプーラを弾かせてもらいました。


この日も、コルカタが誇る女性ボーカリスト、ハイマンテシュ・シュクラさん、凄腕轟音タブラ奏者クマール・ボースさん、その弟さんのサロード奏者デボジョティ・ボースさん、そしてルパシュリーさん。
この組み合わせはなかなか無いという、珍しいコンサートに連れて行ってもらいました。
場所は、ベンガル・クラブ。なんだかとても高級なところで、出てくるお茶やスウィーツがとても美味しかったです。

ライトクラシカルな演奏で、Raga Madhumad Sarang、Shuddha Kalyan、Kirwaniなど演奏されていました。

ハイマンテシュさんは、ムービーソングやベンガルソングなども歌われているだけあって、表現力の幅がとても広いです。




日曜日。


この日は、本当に驚きの素晴らしい歌を聴くことが出来ました!
オジョイ・チャクラバティーさんとコウシキ・チャクラバティーさんのドゥエットが聴けました。
オジョイジーは独特の柔らかい歌いまわしをするボーカリストです。
コウシキジーは、その娘で、日本でも公演したことがあります。私は女性では、彼女の声がいちばん好きです。
インド古典音楽では、ハーモニーという概念が無いのですが、彼らは敢えて時々真っ直ぐに2つの音を重ねていました。
2度ほど、タンプーラを弾いていたオジョイジーのお弟子さんが3つ目の音を低く重ねた時がありましたが、その時は本気で次元が3つに分かれたように見えました。
あまりに素晴らしかったので、近くでレコーディングしていたカメラマンに、レコーディングください、とメールアドレス渡したほどです。

その後、インドの人間国宝、サントゥール奏者のシブクマール・シャルマさんの演奏がありました。
タブラは、石田紫織ちゃんの先生でもある、シュバンカル・バナルジーさんでした。
シブジーはインド人なら誰でも知っているほど有名な方ですが、なんと、彼の愛弟子は日本人です。
新井孝弘くん(通称サブちゃん)と言って、シブジーがコンサートする時は、世界中どこでも一緒に周っています。
いつも、タンブーラ奏者としても、サウンドチェックも、先生の身の回りのお世話を素早く的確にこなして、サブちゃん凄いです。
ところで、ジブジーに関する本が出版されることになったそうです。
「the Man and his Music」
コンサートの席で、そのライターの方がちょうど私の隣に座っていて、少しお話をさせてもらったのですが、彼女はシブジーを20年間追い続けてきたそうです。
シブジーの日本コンサートの際も、同行されていたそうです。
私はサブちゃんの友達だと伝えると、
「タカヒロのことも勿論よく知っているわよ。本当にすごくいい子なの。礼儀も正しくて、もう本当に!」
と、大絶賛でした。私は、日本人として、とても嬉しく思いました。
サブちゃんというインドと日本の架け橋は、さらにとても素晴らしい時代へと繋がっていくと思います。

2013年11月12日火曜日

ターラ (リズム)


わたしの勉強している、北インド古典音楽の中でも、

【カヤール】という種類の古典音楽の構成は、

歌い手の独唱【アーラープ】のあと、

それはそれはゆっくりなテンポでタブラの「リズム」が入ってきます。


リズムのことを、「ターラ」と言います。語源は、手拍子です。

ターラは、西洋音楽の譜面のように、一方向へと進んでいるのではなく、

時計の針のように、ぐるぐると循環しています。

1拍目から始まり、1拍目で終わる。輪廻転生の思想のようです。


また、インド音楽のテンポ感は、驚きのスケールです。

たとえば、ボーカルでよく使われる、【ビランビット・エクタール】。

とてもゆっくりな12拍子、という意味です。

1周、つまり、1から12までに、1分を越えたりします。

かと思えば、1周3秒もかからないテンポもあります。

拍子も、16拍子、14拍子、10拍子、7拍子、などなど、たくさんのあり、

それぞれの拍子によって、基本的な叩き方が決まっています。


また、打楽器奏者は、ソロパートで、多彩な音色を繰り出し、

「ターラ」の世界を自由に飛び回り、ふたたび1拍目へと着地します。

しかし、その姿の裏側には、日々の練磨と緻密な計算があります。

「ターラ」の数学的なリズム感はとても面白く、いつも驚かされます。

チューニング (調律)


タンブーラを、自分の中心音と、演奏するラーガに合わせてチューニングします。


わたし達は、揺らぎながらも、常に完璧なバランスでここに居ます。

その揺らぎを見つめ、深く息をして、呼吸を整えます。

心を落ち着けて、丁寧に音を合わせていきます。

自分の心身もチューニングされる感じがあります。

完璧にチューニングされたタンブーラの響きは、

自身の中心であり、家であり、いつでも帰ってくることの出来る「守られた場所」です。


「チューニング」は、インド古典音楽にとって、最も重要なことです。

それは、「凪」の状態をつくることだからです。


シタール、サロード、タブラなど、楽器も、じっくり時間をかけてチューニングします。

また、演奏中にチューニングがずれた場合は、演奏を中断して、音を直します。


さて、チューニングが整ったところで、いよいよ演奏が始まります。

まず、【アーラープ】という、リズムのない、歌だけの場面。

歌い手の、そして聴き手の中心から、ひとつのラーガが生まれる瞬間です。

声楽


インド古典音楽は、「声楽」を音楽の中核としています。

シタール、サーランギ、バーンスリーといった器楽奏者も、

まず「声楽」から歌う心を学び、歌い方を学びます。

それから、楽器を歌うように奏でる練磨がつづきます。


わたしは、北インド古典声楽の「カヤール」を学んでいます。

古典音楽の中でも新しく、歴史は200年ちょっとです。

神事の歌として生まれた寺院音楽が、時代と共に宮廷音楽となりました。

歌われる対象が、神から人へと移り変わったことで、

人々をより楽しませるために、自由で展開性が大きく華やかに進化しました。

カヤールには、【想像、創造、アイディア、個性】といった意味があり、

「ラーガ」のルールの上で、多彩な技巧と共に即興で演奏されます。

古典音楽ですが、西洋のクラシックよりも、ジャズに近い音楽です。


さて、ここで、演奏家たちが登場します。

ボーカリスト、タブラ奏者、タンブーラ奏者が舞台に座りました。

タンブーラとは、4~6弦のドローン(持続音)を響かせる、弦楽器です。

まず、ボーカリストは自分の中心音と、演奏するラーガに合わせて、

タンブーラを、ぴったりと、「チューニング」します。

インド古典音楽


インド古典音楽は、13世紀、イスラム帝国の影響により、

【北インド古典音楽 (ヒンドゥスターニー)】

【南インド古典音楽 (カルナータカ)】

に分かれていきました。


さらに、わたしの学んでいる、北インド古典音楽は、

最も古くより伝わり、瞑想と祈りから生まれる、重厚な【ドゥルパド】

時代と共に発展し、技巧と即興性の高い、創造的な【カヤール】

に分けられます。


ドゥルパドには、深みのある重厚な音質の両面太鼓の【パカワジ】

カヤールには、多彩な音を繰り広げる高音と低音、2つで一組の【タブラ】

と、それぞれにぴったりの打楽器伴奏がつきます。


長い時を、様々な激動の時代を経て、なお生き続けるインド古典音楽は、

師から生徒へと、口承、主に「声楽」で受け継がれていきます。

2013年11月6日水曜日

音 (スヴァラ)


西洋音階の【ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド】を、

インドでは、【サ レ ガ マ パ ダ ニ サ】といいます。

【サ】が、中心音です。

中心音は人それぞれ違うので、移動ドとして扱われます。

たとえば、わたしの中心音は A(ラ) なので、

【ラ シ ド# レ ミ ファ# ソ# ラ】が、【サ レ ガ マ パ ダ ニ サ】になります。


ひとつひとつの「音」を、丁寧に磨く。


毎日、それぞれの音をまっすぐに研ぎ澄ませる、練磨を繰り返します。

今日出来ても、明日には出来なくなります。

この体から発する音と、この音を発する体を、よく見つめます。

揺れや、滞る喉の力や、背中の強ばりや、たくさんのものが見えます。

時折、体をほぐしながら、音を磨いていきます。


【サ】を限りなく【サ】で歌う。

一寸のズレもなく、ぴったりと中心音を歌う時、

自分の「声」は聴こえなくなります。